AI添削相談 2026-05-20 3分で読める

AIが「契約解除できます」と言った業務委託トラブルを、弁護士ならどう見るか

業務委託契約で納品遅れや品質不満がある場面を題材に、AIの回答例と弁護士の赤入れを示します。解除、損害賠償、催告、証拠、現実的な交渉の順に整理します。

AI添削相談

仕事を依頼したのに納品が遅い。出てきた成果物の品質が低い。連絡も悪い。こういう場面でAIに相談すると、「契約違反なので解除できます」「損害賠償請求を検討しましょう」という回答が出ることがあります。

もちろん、契約違反があるなら解除や損害賠償が問題になります。ただ、実務で大事なのは、そこに行く前の確認です。契約内容、納期、成果物の定義、修正機会、催告、こちら側の対応、損害の資料。これらを見ないまま解除通知を出すと、かえって紛争が大きくなることがあります。

たとえば、ウェブサイト制作を50万円で依頼し、納期を過ぎても完成しないという相談を考えます。

AIの回答例

相手方が納期までに成果物を納品していない場合、債務不履行にあたります。依頼者は契約を解除し、支払済み代金の返還や損害賠償を請求できる可能性があります。まずは内容証明郵便で解除通知を送り、返金を求めるべきです。

この回答は、法律の入口としては間違いではありません。納期遅れは債務不履行の問題になりますし、解除や損害賠償を検討することもあります。

ただ、弁護士として見ると、いきなり「解除通知を送るべき」とは言いません。

契約書とやり取りを見る

まず契約書を確認します。納期は確定しているのか、段階納品なのか、仕様確定が前提になっているのか、修正回数や検収の定めはあるのか、途中解約や返金について書かれているのか。業務委託契約では、そもそも「完成」の意味が曖昧なことがあります。

メールやチャットのやり取りも重要です。依頼者側が素材や確認を遅らせていないか、途中で仕様変更をしていないか、相手方が遅延理由を説明しているか。納期遅れに見えても、実際には双方のやり取りでスケジュールが変わっている場合があります。

AIの回答例は、「納期を過ぎた」という一つの事情から解除へ進んでいます。相談では、まずその納期が法的にどれだけ強い意味を持つのかを確認します。

催告が必要かを確認する

契約解除では、催告が必要になる場面があります。相手に一定期間を定めて履行を求め、それでも履行されない場合に解除する、という流れです。無催告解除ができる事情があるのか、契約書に定めがあるのか、納期の性質からもう履行の意味がないといえるのかを見ます。

ここを飛ばして解除通知を出すと、相手方から「解除は無効だ」「依頼者側が不当に打ち切った」と反論されることがあります。AIは結論として「解除できます」と言いやすいのですが、実務では解除の前段階がかなり大事です。

損害をどう示すか

損害賠償を請求するなら、損害の中身を示す必要があります。支払済み代金、別業者に依頼し直した費用、公開遅延による損失、社内対応の負担など、どこまで請求できるかは資料次第です。

「仕事が遅れて困った」というだけでは、損害額にはなりません。見積書、請求書、振込記録、別業者の契約、公開予定日、取引先とのやり取りなど、金額と因果関係を支える資料を見ます。AIの回答例は、損害賠償という言葉を出していますが、損害をどう立証するかには踏み込んでいません。

現実的な解決を考える

50万円の制作契約で、全面的に解除して訴訟まで進むべきかは別問題です。一部返金、未完成部分だけ別業者へ引き継ぐ、データの引渡しを求める、検収条件を切り直す、追加期限を設定する。事業上は、早く次に進むことが一番価値を持つこともあります。

弁護士が見るのは、法律上できる主張の最大値だけではありません。費用、時間、証拠、相手方の資力、事業への影響を見て、どこで区切るのが合理的かを考えます。

AIに聞くなら、こう聞いた方がよい

AIに「契約解除できますか」と聞くと、解除できる方向の一般論が出やすくなります。相談前の整理なら、次のように聞く方が向いています。

業務委託契約で納品が遅れています。解除できるかを断定せず、確認すべき資料を整理してください。契約書、仕様書、納期、検収、修正依頼、こちら側の対応、相手方の遅延理由、催告の要否、損害資料に分けてください。相手方から想定される反論も挙げてください。

この聞き方なら、AIは少なくとも資料の確認に戻りやすくなります。弁護士相談に持ってくるときも、その整理があると話が早くなります。

AIの回答は、法律用語を出すところまでは得意です。ただ、解除通知をいつ出すか、どの文言にするか、どこまで請求するかは、資料と交渉状況を見ないと決められません。そこを現実の事件に合わせて直すのが、AI添削相談でできることです。

弁護士 佐藤 佑亮
佐藤 佑亮
晝間法律事務所 / 東京弁護士会

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