AI添削相談 2026-07-27 更新 2026-07-27 4分で読める

AIが「借金は5年で時効だから払わなくてよい」と答えたとき、弁護士ならどう見るか

古い借金や未払金について、AIが「5年で時効」と答えた場面を題材に、起算点、旧法・新法、支払や返答の経過、時効援用、裁判所から届いた書類を確認します。

AI添削相談

何年も連絡がなかった会社から、突然、古い借金の請求書が届いた。AIに聞くと、「借金の時効は5年です。最後の支払から5年以上経っているので、支払う必要はありません」と答えた。

ひとまず安心したくなる回答です。ただ、このまま請求を放置してよいかというと、まだ材料が足りません。時効の年数が分かっても、いつから数えるのか、途中で何があったのか、時効をどう主張するのかが残っています。

AIの回答例

借金の消滅時効は原則として5年です。最後の返済から5年以上が経過しているため、時効が成立しており、返済義務はありません。請求には応じなくてよいでしょう。

文章は短く、結論も明快です。民法166条に5年という期間が書かれていることも間違いではありません。けれども、この回答は「最後の返済から5年」という起算点を事実確認なしに置き、時効期間の経過と、実際に時効の効果を使う手続を一緒にしています。

ここが赤入れの出発点です。

「最後の返済から5年」とは限らない

まず確認するのは、何の債権かです。カード利用代金、貸金、家賃、業務委託料、売掛金では、契約の内容と支払期日が違います。分割払いなら、どの支払分がいつ期限を迎えたか、一括請求できる状態になったのはいつかも見ます。

2020年4月に改正民法が施行されたため、債権が生じた時期によって旧法と新法のどちらが問題になるかも確認が必要です。「今から5年前より古い」というだけでは決まりません。

日付を一つ置けば計算できるように見えます。しかし、置くべき日付がまだ決まっていない。その状態で年数だけ数えると、答えは簡単に見えても、請求への対応には使えません。

途中の支払や返答を確認する

次に、請求が来なかった期間だけを見るのではなく、その間のやり取りを確認します。少額でも支払ったことがあるか、分割払いを申し出たか、支払を待ってほしいと伝えたか。訴訟、支払督促、差押えなどの手続が取られていないかも調べます。

民法152条は、権利の承認があった場合、時効がその時から新たに進行すると定めています。どの言動が承認に当たるかは、その文面と経緯を見なければ判断できません。請求書を受け取った直後に「少しなら払えます」「来月まで待ってください」と返信すると、その返答自体が問題になることがあります。

だから、慌てて返事をしないことには意味があります。ただし、何もせず放置すればよいという意味ではありません。

時効は、年数が過ぎれば自動的に処理されるわけではない

民法145条は、時効は当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができないと定めています。期間が経過している可能性があっても、相手方への意思表示や訴訟上の主張をどうするかが残ります。

請求元が現在の債権者なのか、債権譲渡を受けた会社なのかも確認します。契約番号や原債権者が曖昧な通知に対し、こちらから詳しい事情を話しすぎる必要はありません。一方で、身に覚えがない請求や架空請求なら、時効とは別の問題です。

AIへ「時効ですか」と聞くと、時効の説明に沿って回答が進みます。けれども実際の相談では、請求そのものが特定できているかという一段手前から見直すことがあります。

裁判所から届いた書類は、請求書と同じ扱いにしない

郵便やメールによる請求と、裁判所から送達された訴状・支払督促は分けて扱います。支払督促は、受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ、仮執行宣言が付され、強制執行へ進むことがあります。

「時効だと思うから無視する」という対応は危険です。時効を主張できる可能性があっても、裁判所の手続では期限内に主張を出す必要があります。封筒、受領日、同封書類を残し、書面に書かれた期限を先に確認します。

相談時に確認する資料

AIの回答と一緒に、次の資料があると経過を追いやすくなります。

  • 最初の契約書、申込書、利用明細
  • 返済予定表、請求書、取引履歴
  • 最後に支払ったことが分かる通帳や領収書
  • 請求元とのメール、手紙、録音、通話メモ
  • 以前に届いた訴状、支払督促、判決、和解書
  • 今回届いた封筒を含む一式と、受け取った日

全部そろっていなくても、AIとのやり取りを消したり、きれいな相談文へ作り直したりする必要はありません。「最後に払ったのは多分この頃」という部分と、資料で確認できる部分を分ければ、追加で何を取り寄せるべきかが見えてきます。

AIには、結論ではなく欠けている事実を聞く

同じAIを使うなら、「時効ですか」と結論だけを聞くより、次のように聞く方が相談準備に使えます。

この請求について、消滅時効を判断するために不足している日付と資料を挙げてください。時効が成立しない可能性がある事情、相手方から予想される反論、裁判所書類が届いている場合の期限も分けてください。条文は現行の公式資料で確認できるURLを示してください。

それでも、AIは契約書や取引履歴の意味を確定できません。回答を持参してもらえれば、残せる整理と、資料へ戻って考え直す部分を分けます。時効の可能性があるのか、相手方へ何を伝えるのか、裁判所への対応が先なのか。相談だけで方針が固まる案件もあります。

AI添削相談では、AIの回答、請求書、相手方とのやり取りをそのまま確認します。裁判所から書類が届いている場合は、フォームに書類名と受領日も記載してください。

参考:

この記事は一般的な解説で、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応は、契約書、通知書、やり取りの記録といった資料と事実関係によって変わります。

晝間法律事務所所属 / 東京弁護士会

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AIで作った相談メモ、内容証明案、相手方への返信案があれば、そのまま相談資料として確認します。