AI添削相談 2026-07-27 更新 2026-07-27 3分で読める

AIが「契約書がないので請求できない」と答えたとき、弁護士ならどう見るか

契約書を作らずに仕事を依頼し、代金が未払いになった相談を題材に、口頭契約の成立、合意内容、メールやチャット、納品物、支払記録の確認方法を整理します。

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知人からウェブサイト制作を頼まれ、見積額は30万円と伝えた。正式な契約書は作らなかったが、チャットで相談しながら作業を進め、サイトも公開した。10万円は支払われたものの、残りは払ってもらえない。

このような事情をAIへ入れると、次のような回答が出ることがあります。

署名した契約書がないため、契約が成立したことを証明するのは困難です。法的な支払義務は認められない可能性が高く、残代金の請求は難しいでしょう。

慎重に見える回答ですが、契約書がないことから結論へ進みすぎています。

契約書がなくても、契約は成立し得る

民法522条2項は、法令に特別の定めがある場合を除き、契約の成立に書面などの方式を必要としないと定めています。仕事の内容と代金について申込みと承諾があれば、口頭やチャット上の合意でも契約は成立し得ます。

したがって、「署名した契約書がないから契約はない」とは言えません。

ただし、ここで「口約束でも契約は有効なので、残り20万円を請求できます」と言い切っても、今度は反対側へ結論を急ぎすぎています。問題になるのは、契約書という名前の書類があるかだけではなく、誰が、どの仕事を、いくらで、いつまでに行うことへ合意したのかを、手元の資料から確認できるかです。

30万円の合意があったのか

最初に見積額30万円を伝えていても、相手がその金額を了承したとは限りません。「一度検討します」と返しただけなのか、「その金額でお願いします」と依頼したのかで違います。

確認するのは、見積書、メール、チャット、打合せメモ、発注の言葉、着手金の振込、請求書です。10万円の支払があれば契約関係を示す材料になりますが、それが着手金なのか、作業全体の代金なのか、別の費用なのかはやり取りと合わせて見ます。

途中で機能やページが追加された場合には、当初の30万円に含まれる作業だったのか、追加料金について合意したのかも問題になります。完成後の請求書だけで初めて金額を示したのであれば、請求書を送ったことだけで相手の合意まで証明できるわけではありません。

納品したと言える状態か

相手方からは、「依頼したものが完成していない」「修正が残っている」「公開しただけで納品とは合意していない」と反論されるかもしれません。

そのため、公開中のサイトだけでなく、納品データ、送信記録、公開日、管理画面の引渡し、修正依頼と対応履歴、相手が公開を了承したメッセージを確認します。こちらがどこまで作業を終えたのか、未了部分があるなら残代金との関係をどう見るのかを整理してから請求内容を決めます。

契約書がない事件では、資料が何もないとは限りません。普段のメールやチャット、振込、納品物が、合意と履行を確認する資料になります。逆に、それらをAIが作った時系列だけに置き換えてしまうと、元の言葉の強さや前後関係が失われます。

書面が必要な契約もある

契約一般について「書面は不要」と覚えるのも危険です。たとえば保証契約は、民法446条2項により、書面でなければ効力を生じません。同条3項は、内容を記録した電磁的記録について書面とみなす規定を置いています。このほかにも、契約の種類によって方式や交付書面が問題になる場面があります。

AIへ相談するときは、単に「口約束でも契約になりますか」と聞くだけでなく、何の契約か、どのようなやり取りで合意したかを伝える必要があります。

弁護士が赤入れするなら

最初のAI回答は、次のように直します。

契約書がないことだけで、契約が成立していないとは決まりません。まず、仕事の内容、代金、期限について相手が了承したことを示すメールやチャット、見積書、支払記録を確認してください。次に、納品した内容と、相手から指摘されている未了・不具合を整理します。残代金20万円を請求できるかは、30万円の合意と、約束した仕事をどこまで終えたかを資料から確認して判断します。保証契約など書面が効力要件となる契約もあるため、契約の種類も確認が必要です。

この回答なら、契約書がないという一点で諦めることも、口約束は有効だという一般論だけで請求書を送ることも避けられます。

AI添削相談では、AIの回答と一緒に、元のメール、チャット、見積書、請求書、納品物を確認します。相手方へ送る文章をすでに作っている場合は、AIが作った返信案を送る前の確認点もご覧ください。契約書の確認そのものは、AI契約書レビューで案内しています。

参考: 民法522条・446条(e-Gov法令検索)

この記事は一般的な解説で、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応は、契約書、通知書、やり取りの記録といった資料と事実関係によって変わります。

晝間法律事務所所属 / 東京弁護士会

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AIで作った相談メモ、内容証明案、相手方への返信案があれば、そのまま相談資料として確認します。